中場満の痴観妄想(ちみもうそう)コラム17
−『リメンの真実』−文/中場満 text= Mitsuru Chuba
----------------------------------------やぁ諸君、ご機嫌いかがかね?
実に、久しぶりだ。
ちょっと野暮用があって2月から4月までお休みさせてもらった。
気が付けば、2010年もあっという間に3分の1が過ぎ、
とうとう5月になってしまった。
5月が爽やかで、妄想にはもってこいの季節である。
きっと諸君も一年で一番素晴らしい
妄想を楽しんでいることであろう。
フッ、フッ、フッ・・・
さて、早速だが、4ヶ月ぶりなので、
最近のとっておきの話をすることにしよう。
あれは、新橋で仕事を終え、
次の約束先である銀座へ向かっていたときの出来事である。
私は、人で混雑している大通りを避け、
迷路のような細い路地を通り抜けながら歩いていた。
すると、ポツポツと雨が降ってきた。
この雨の状況をみると一気に本降りになるな、
と思うが早いか、急に雨足が激しくなってきた。
私は、急いで雨宿りできそうな近くのビルに慌てて駆け込む。
まさに、春の嵐と呼ぶに相応しい土砂降り状態の雨である。
雨宿りしながら、落ち着いて周囲を見渡すと、
すぐ隣には、私でさえも洒落ていると感じる
綺麗なディスプレイが施されたショーウィンドウが見える。
どうやら隣のビルの1階には、ブティックが入っているようだ。
向かい側のビルの1階には、
中華料理店らしき飲食店が入っている。
そして、私が雨宿りしているビル1階は、
飲み屋のようである。
どうやらこの辺りは、服飾関係の商品を扱う小売店や、
飲食店等が入り混じった商業地域のようだ。
だが、これはまずい。
私が雨宿りしているビルの飲み屋は、
これから開店するらしい。
店の営業に支障を与えそうなので、
いつまでもここで雨宿りする訳にはいかない。
雨宿りをするのに支障のない場所を探すために
私が雨宿りしているビルと隣のビルとの間にある
半間程の幅をした狭い路地を何気に覗き込んでみる。
すると、隣のビルの横側に何やら入口らしきものがある。
ちょうど、綺麗なディスプレイの裏側に相当する位置だ。
でも何であんなところに入口らしきものが・・・
もしかしたら、ビル関係者専用の入口なのかも知れない。
んっ? ちょっと待てよ?
だが、扉はない。
気になった私は、
僅かな距離だがその入口まで走って行った。
見ると、そこはすぐに地階へと続く階段の入口であった。
だが、地階へ続く階段には灯りも点いていないし、
入口に看板らしきものもない。
なるほど、きっと地階はこのビルの機械室か電気室なのであろう。
だったら丁度いい、
ここなら何の支障もないであろうから暫く雨宿りができる。
そう思っていると、まるで私が来たことを察知し、
私を地階へと導くかのように、
手前から奥へ向かって点々と階段の灯りが点きだした。
えっ? この下に店でもあるのか?
小心者の私ではあるが、
気になったので恐る恐る地階へと降りてみた。
すると、薄暗いせいで何だか古惚けたように見えるが、
それが却って重厚な感じを与える木製の扉があった。
扉には、ステンドグラスのような装飾が施してある。
そして、扉には何やら店名らしきものが書いてある。
「Rimen・Bar」という文字の下に、
大きく『真実』という文字。
リメンバー マミ・・・
んっ?
店の名前から想像すると、ここは「スナック」のようだ。
ママさんの名前が「真実」というのであろうか?
だが、店の名前の中に「Bar」の文字がある。
ということは、「バー」何かも知れない。
まぁ、何れにしても飲み屋には違いないであろう。
それにしても「Rimen・Bar(リメン・バー)」とは、
「Remember」をもじったのであろうか?
と言うことは、
思い出の場所『真実』という意味なのかも知れない。
う〜ん、何だかますます「スナック」らしく思えてくる。
もしかしたら、美人のママさんがいる
スナック風の「Bar」なのかも知れない。
ニヤッ・・・
外はまだ激しい雨だ。
次の約束はあるがビールくらいなら大丈夫だろうと思いつつ、
ちょっと期待して扉を開ける。
すると、目の前にあるカウンターの中には、
無表情の中年、いや初老といった方が相応しい親父が一人いる。
うわっ、名前にやられた!
まぁ良い、変な期待をした私がいけない。
これも勉強だ。
ビールだけ飲んですぐに店を出よう。
そう思いつつカウンターの止まり木に腰を下ろすと、
おもむろにマスターが「暫くだね」と小さな声で呟く。
えっ? 暫くだねだって・・・
ちょっと待ってくれ。
私は初めてこの店へ来たんだ。
「あれっ、人違いじゃない? ここは初めてだけど・・・」
と私はマスターへ告げた。
すると、会話を遮るように、いきなり店の扉が開いた。
そして、二十歳前後の若い女の子が入ってきたかと思うと、
「おじいちゃん、ここに新聞を置くね。」と言って、
カウンターの上へ新聞を置いてすぐに去って行ってしまった。
「あぁ、マミ。いつもご苦労さん。」
とマスターは閉まりかけた扉へ向かって声を掛ける。
なるほど。
彼女はマスターの孫で、名前は「マミ」と言うんだ。
それで、可愛い孫の名前の「真実」を店名としたんだ。
うん、納得。
そんなことを考えていると、
「ハイ、いつものビール。」といってマスターがグラスへとビールを注ぐ。
えっ、未だ何も注文をしていないのに。
それにいつものって何なんだ・・・
まぁいい。
どうせこのビールを飲んだら店を出るのだから・・・
そう思いつつビールを飲みながら、
おもむろにカウンターの上へ置かれた先ほど新聞へと目をやる。
すると、
「日本経済 奇跡のV字回復」と一面の見出しが目に入る。
なんだ? 何か変だぞ。
私は「マスター、ちょっと新聞を見せて・・・」
と断ってその新聞を読んでみる。
すると、我が国は本来の日本に価値に気付き、
観光や農業、モノ作り技術を基調とした創業が全国各地で相次ぐ。
今やエコノミックアニマルならぬエコロジックアニマルの勢いで
経済が急速に回復、云々・・・と書いてある。
えっ? 何だ。
この新聞は嘘ばかりと思って新聞名を見ると、
「真実新聞」とある。
何だ、店の名前と一緒じゃないか。
ということは、この店が独自に発行している新聞ということか?
だから変な夢みたいな内容なんだ・・・
「マスター、この新聞は何? 内容がおかしいじゃない。」
と私はマスターへ向かって告げる。
すると、マスターは
「あんた暫く来ないと思ったら、目が曇ってしまったんだね。
」 と私に向かって告げる。
何だって、私がおかしいのか???
「だって、今朝のA新聞にはそんなこと何も書いてなかったよ。
それに、今の日本でそんなことあるわけないじゃないの」
と私はマスターへ向かって告げる。
すると、マスターは、フッと苦笑したあとに続けて、
「A社もY社もM社もS社も、新聞社はみんな落ちぶれてしまったよ。
今のマスコミには見識も、責任も何もないじゃないか。」
と私に向かって告げる。
すかさず、店のカウンターの端っこの席に座っていた、
見ず知らずの二人組の男性も、私に向かって口々に告げる。
「そうだよ、あんた。
新聞社だけでなく、テレビ局も、出版社も大手マスコミはみんな、
自分らに都合の良い企てしか書かないからね。」
「そう、マスコミは本当の価値と真実を見極めて、
私たちに中立に告げていないじゃないの。」
えっ、えぇ〜???
私の方がおかしいだって・・・
私は訳がわからずに急に恐怖を覚え、
カウンターに両肘を付いて頭を抱え込んでしまった。
どれくらい時間が経ったであろうか
私がゆっくりと頭を上げると、
目の前にはうす汚れたコンクリートの壁が・・・。
あれっ?
周囲を見渡すと、私は行き止まりの階段下に腰掛けていた。
私はどうしたんだ?
確か・・・、
新橋から次の約束先である銀座へ向かっていて急に激しい雨に降られ、
雨宿り代わりに地階の店へ入ったはずだが・・・
しかし、店の扉らしきものは何も無い。
ちょっと待てよ。
店の名前もはっきりと覚えている
「Rimen・Bar(リメン・バー) / 真実」だ。
んっ?
もしかして、先ほどの新聞の内容から推測すると、
「リメン」とは「裏面」、すなわち裏側のことで、
「真実」とは「マミ」という女の子の名前ではなく、
「しんじつ」ということなのかも知れない。
ということは、さっきの店は、
物事の裏側の面を見る酒場、それも真実を見極める酒場、
ということ意味することになるのか?
これは、私に対して、
大勢の情報を無条件に信じず、自らの目で真実を見極めろ、
ということを伝えてくれたのかも知れない。
おぉ、そうだ。 そうに違いない。
さっき、マスターと見知らぬ二人組の男性が言っていた通りだ。
それに「リメン」は、「履面」とも「離面」とも書ける。
つまり、物事は表面的・一面的に見ないで、
裏側の面、覆われた面があることを考慮しつつ、
離れて全面的・多面的に捉えろ、
ということを私に教えてくれたのであろう。
そう考えると、さっきの新聞の見出しは、
正に、裏側の面・覆われた面のことなのかも知れない。
なるほど、確かに物事を表面的・一面的に見てしまうと、
自分の思いと違うことに対して、不平・不満を感じてしまうことになる。
だが、物事を全面的・多面的に捉えれば、
自分の思いと違っていても、それを理解することができるかも知れない。
うむっ・・・・・
だが、気になることが、未だ一つ残っている。
確か、マスターは、
私に向かって「暫くだね。」と言っていた。
これは一体、何を意味するのであろうか?
「暫く・・・」と言うことは、
私は以前もあの店へ行ったことがあることになる。
ということは、さっきのことは私に教えたのではなく、
私に思い出させたことになる・・・
あぁ、やっとわかったぞ。
それであの店の名前は「Remember」をもじった
「Rimen・Bar(リメン・バー)」なんだ。
私は、大事な自分の目を忘れて、
いつしか他人の目だけを当てにして信じきっていたんだ。
そうだ、これからは自分の目で、
物事を全面的・多面的に捉えていかなければいけないのだ。
私は、何だかとっても大事なモノを取り戻したように感じた。
そして、奇妙な感じを残しつつも嬉しい気持ちになった私は、
なぜだか心の中で、「ありがとう。」と呟きながら、
足早に階段を駆け上った。
すると、階段の上は、どこか見馴れた風景であった。
そう、私が行く予定であった銀座の約束先近くである。
えっ? 何で?
振り返って階段を確認すると、
間違いなく、そこは地下鉄の出口である。
不思議だ?
フッ、フッ、フッ・・・
どうだね、諸君も一度や二度、
こんな経験をしたことがあるのではないかね?
そんな経験なんてあるわけがない、と思った諸君。
それはどうかな?
今日、諸君の目の前で起こったことって、
本当に真実なのかな?
フッ、フッ、フッ・・・
(日常評論家 中場満)
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覆面ライター中場満(ちゅうば・みつる)こと 中林猛季プロフィール・知財コンサルティングのエキスパート。Heizにはナカバマンがついている!
「自分のビジネスの価値は何?その価値はいくら?価値が見えるから、適正な値付けが出来る。
あとはその価値をお客様に見せるだけ・・・だから、理由のない値引き競争や値下げ競争には巻き込まれないでください。」
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