【PCオレンジのパソコンよもやま話 vol.11】
Windows7とはなにか?
Jan.2009
先日行われたCESという展示会で、米SanDisk が 第3世代と称する安価で高速なSSDを発表しました。(SSDについては、第7回「データストレージの変革」を読んでくださいね。)また、2TBまでサポートするSDカード、メモリースティックの規格などが発表されました。 これからどんどんシリコンディスクと呼ばれる、モーター駆動部分のないデータストレージ機器の発展が加速しそうです。
4GBのマイクロSDカードが500円で買える時代です。ぼやぼやしているとおいていかれますね。
そんな中、富士通がHDD事業から撤退する(予定)など、新旧交代の時期は早々にやってきそうです。
さて、今回はWindows7のお話です。
2009年1月13日にマイクロソフトは、Windows7のベータ版を公開しました。
いよいよ、Windows Vista の次のOSが登場しそうです。え?もうなの?と思ってる人はどうぞ先に読み進めてください。
■早くも新しいWindowsOSの登場
WindowsXPが発売されたのが2001年11月16日、Windows Vista が発売されたのが2007年1月30日。
そして、2009年末には、新しいWindowsのOSが発売される予定です。2年弱という短期間にまた別のOSが発売されようとしています。
その新しいWindows OS の名称は「Windows7」です。
WindowsXPが使われ続けた5年間はあまりに長すぎて、Windows Vista から次の Windows7 まで期間がとても短く感じられますよね。そして、このあまりにも短い期間には訳がありました。
■Windows7の正体とは
結論から言いますと、Windows7 は Windows Vista の改良版です。
Windows Vista(改)とでも名づけて欲しいくらいぱっと見はそっくりです。
マイクロソフトも Windows7 の基本部分は Windows Vista であると認めています。
どうしていったい、こんなことが起こるのでしょうか?
■名称を変えると素敵なものに変化したように感じる
省エネはもう古い、これからはエコの時代だ。
ASPはもう古い、これからは SaaS の時代だ。
いや、SaaS はもう古い、これからは「クラウドコンピューティング」だ。
※)SaaSやASP、クラウドコンピューティングの話は長くなる上につまらないので割愛します。
Web2.0という言葉を皮切りに、新しい造語はコンピュータの世界でよく使われるようになりました。
名称が変わるだけで、なにか素敵なもののように聞こえてくるから不思議です。
もちろん、実際に技術的な部分で躍進している場合もありますが、単なる改良であっても名称(呼称)を変えることでとても素晴らしいものに感じる魔力があります。
働いているのに一人暮らしをしない人をパラサイトと呼び、働きもせず自宅にこもる人をニートと呼ぶことで、なんだか新しい人種にでもなったかのように錯覚するのも、新呼称の効果のひとつですよね?^^
話を戻してWindows7の話です。
マイクロソフトはおそらくきっとこう考えたのでした。
「WindowsXP の提供をストップしたことで、確かに Windows Vista はある程度世の中に広まった。しかし、あまりにも評判が悪い。いまさら
Windows Vista を使いやすく改良しましたので、もっと使ってくださいと言っても誰も聞いてくれないだろう。ちょっと時期が早いけど、別の名前で
Windows OS を発表してしまおう。名前も少し派手目にすればいい。だって、Windows Vista ってそんなに悪くないOSなんだもの。パソコンの性能は高いものを要求するけどさ。」と。
もちろんこれは私の勝手な想像ですが、それほど間違ってないとも思っています。
■評判も上場、出来も上場のWindows7
そんなわけで、Windows Vista の改良版である Windows7 は、改良版だけあってかなり早い時期に製品自体も完成しそうです。
一見 Windows98 に対する WindowsMe への変身に近いように見えますが、実際のところは、Windows Vista
の欠点であった速度の遅さを補い、かなり出来はよいようです。
しかも通常この時期では早すぎる Windows7ベータ版の提供も始めました。
ちなみにベータ版とは製品になる一歩手前ものをいい「自由に使っていいので何か問題あれば報告してね、製品版に反映させるから」というお試し版のようなものです。
この Windows7 ベータ版は、世間一般で試した人々の中でかなり評判がいいようです。Windows Vista の欠点が改良されており、速度も速くなっています。
しかも、ドライバと呼ばれる周辺機器を動かすプログラムは Vista のものがそのまま使えるので(改良版なので当たり前ですね)、Windows7
にしたら周辺機器が使えなくなるという可能性が少ないのも利点です。
■まるで壮大な実験場であるところの顧客
ベータ版というものが「使ってみて問題を報告する実験プログラム」だとすると、まるで Windows Vista 自体が、Windows7のための実験場のようです。
これだけを見ると一見マイクロソフトだけが悪者に見えますが、Macの世界でも、MacOS X の、10.1〜10.3 は、10.4のためのベータテスト的な意味合いも無いとはいえないので、一概にマイクロソフトだけを責められません。ただし、マイクロソフトのOS価格がMacOS
X に比べて2倍もするのはあまりにもひどすぎますが。
「もう次の新しいWindowsが出るのか!けしからん!」と怒ってみてもしょうがありません。
実際、Windows Vista を普通に便利に使っている人も世の中にはたくさんいます。
当然 Windows7 が搭載されたパソコンが今年の年末から発売されても、それを買って普通に便利に使う人もたくさんいるのだろうと思います。
パソコンの世界は、分進秒歩。次々と変わっていくのは宿命のようなものですね。
■まとめ
実際のところ、OSがコロコロ変わられて一番困るのは、私のようなパソコンのサポートを仕事としている人や、パソコンメーカーのサポート窓口、会社のSEや会社のパソコン管理者たちです。
便利なものをより便利に使えるように進化していくスピードは、それが速かろうが遅かろうが、それに合わせて使う側はその都度慣れていくしかなさそうです。
とはいえ、私のコラム第3回と第4回で述べたように、既に使う側の思考回路をオーバーしたところでパソコンの世界はしのぎを削っているようにも見えます。メールとインターネットしかしない人たちにとって、どうでもいい世界にも思えてなりません。
願わくば、今までの改良に次ぐ改良といった製品ではなく、目を見張るような素敵で革新的なパソコンの使い方を提供する「画期的なOS」の登場を待ちわびたいところです。
それに近いところにいるのがMacOS X だと思いますが、いかんせん使っている人が少なすぎますね。
それでは、また次回。
【PCオレンジのパソコンよもやま話 vol.12】
Netbook を改めて考える
text= Takuya Nagao Feb.2009
Windows7の発売がいよいよ秒読みに入ってきています。今年の年末に発売されるのはほぼ確実のようです。
先日リークされたWindows 7 Professional の販売価格は$299.95です。OS単体としては結構なお値段ですね。
今のところWindows7アップグレード版の情報は出てきていません。こちらがいくらになるのか心配です。
さて今回は、第5回「変わり行くパソコンの世界」でお話したNetBookのお話です。
2008年7月に紹介したNetBookは現在どうなっているのでしょうか?そしてこれからどうなっていくのでしょう。
■100円のミニパソ発売中!のからくり
大きな量販店に行くと「100円パソコン」というのが流行っています。
流行っているというか、煽っているというか、お店の宣伝としてこれ以上の謳い文句はありません。
「パソコンが100円で買えます!」と言えば、その宣伝文句が多少眉唾でも「お?なんだそれ?」と足を止めることは請け合いです。
知らない方のために説明すると、100円パソコンは実在します。もちろん詐欺ではありません。
これは、イーモバイルという公衆無線規格を利用したインターネットサービス会社の抱き合わせ商品です。
今時抱き合わせという言い方がいいのかどうかは分かりませんが、このイーモバイルと2年契約を結ぶことでパソコン1台が100円で購入できます。もちろんイーモバイルはとても便利な無線機能で、都心近郊であればどこにいても快適なインターネットを利用できますが、月々2900〜6880
円の使用料金がかかります。
そして100円で購入できるのは、NetBookと呼ばれるカテゴリに入るノートパソコンだけです。
このNetBookというパソコンは、CDやDVDドライブがついてない小さくて軽いノートパソコンのことです。
最近店頭では「ミニパソコン」という名前で宣伝されており、意外と日本ではこの名称が定着して来ているようです。
■2008年12月の販売シェアで25%の売り上げを占めるNetBook
一部のマニアや、パソコンを持っている人が2台目として購入するだけであろうと考えられていたNetBookパソコンですが、業界の想像を超えてものすごく売れています。
そしてNetBookの売れ筋は、ASUSやAcerといった台湾メーカーです。遅れて参戦した日本のメーカーであるTOSHIBAやNECは出遅れてしまい、SOTECがかろうじて上位に食い込んでいるようです。レノボやDELL、HPなども本格的に参戦していよいよNetBook戦国時代が到来したようです。
現在発売されているNetBookは第3世代、つまり3回ほどのモデルチェンジを向かえて、既にNetBookというジャンルが成熟してきているようにもみえます。
■子供に1台ミニパソの時代
先日私のお客さんが自分の子供2人(中学生)に1台ずつNetBookを購入しました。購入したNetBookは、1台5万円弱です。
そのお客さんが「ミニパソコン」と連呼していたので、そんな呼称はあるのかしら?と思っていましたが、店頭に行って合点が行きました。お店では大々的にミニパソコンと銘打って専用のコーナーが設置されていたのです。
確かに日本人にとってネットブックなどと呼ばれるより、ミニパソコンと言われた方が分かりやすいですよね。
このミニパソコンは軽量で手軽に持ち運びが出来、自宅に無線LAN環境があれば家中どこでもインターネットが出来ます。機能は必要十分。メールとインターネットであれば何の不自由もありません。しかもパソコン単価が1台5万円しないとあれば、壊れてしまっても買い換えるのにそれほど躊躇しない金額でしょう。これはある意味、真の「パーソナルなコンピュータ」ともいえます。
ちなみに、そのお客さんはミニパソコン購入と同時に外付けDVDドライブも買っていました。オプションでドライブを買うというスタイルもあながち間違っていないのかもしれません。
そしてパソコン購入と同時に、インターネットの閲覧制限をかけるソフトウェアもセットアップしました。
もし子供がインターネットで卑猥な言葉などを検索しても、そういった有害なホームページは表示されないよう制限をかけることができます。こういった有害サイトを子供の目から防御するソフトは10年ほど昔から存在していましたが、日々進化してきています。なかなか面白いジャンルのソフトなので、興味のある方はいつでも私を捕まえて聞いてくださいね。
■年末のWindows7登場でNetBookの世界は変わるか?
とりわけ日本のメーカーにとっては薄利多売で大した儲けにならないNetBookですから様子見の感がありましたが、蓋を開けてみたら世界中で大流行しました。しかしそれも2009年末のWindows7発売までかもしれません。
ちなみに現在のNetBookが売れているのにはいくつかの偶然に助けられた要素があります。
もちろん技術革新のおかげもありますが、一番のポイントはOSにWindowsXPが搭載されているからです。
もしもWindowsXPではなく、WindowsVistaだったら使い物にならないくらい動作が遅く、NetBookはこれほどまでは売れなかったでしょう。
もしもWindowsXPではなく、LinuxというOSしか搭載されていなかったら、使い方が分からない人が続出してやはり同じようにそれほどは売れなかったでしょう。
逆に言えば、Microsoft様がNetBookにWindowsXPというOSを安くライセンス提供してくれたおかげで、現在のNetBookの大ブームが起こったわけです。
さて、Windows Vistaの次の Windows7ですが、動作はWindowsVistaより軽くサクサク動きます。
それなら今年の年末には、Windows7が搭載された新しいNetBookが巷を騒がせるのでしょうか?
どうやらそうはならないようです。
現在のところ、MicrosoftがNetBookに提供予定の Windows7 は、Windows7 Starter という機能制限のついた専用バージョンです。
この Windows7 Starter は OS 自体の価格は安いかもしれませんが、NetBookに対して今と同等の機能制限を掛けてきそうです。つまり、高機能なノートパソコンにはWindows7
Starter は搭載できません。
現在のNetBookには、メモリ1GB以下、画面が1024×600以下といった様々な制限があります。
これと同じかひょっとしたらもっと厳しい制限下でしか Windows7 Starter を提供しないとなった場合、NetBook自体の高機能化への進化は止まってしまうでしょう。
上位のWindows7 Home Premium を搭載しようとしたら、一昔前のように1台8万円以上の普通のノートパソコンばかりになってしまうかもしれません。
【PCオレンジのパソコンよもやま話 vol.13】
ようやく気づき始めたメーカー 〜パソコンのデザイン性〜
text= Takuya Nagao
ワイヤレスモバイルブロードバンドの本命、WiMAXのサービスが日本で始まろうとしています。
現在、無償トライアルテスター募集を締め切り、UQ WiMAX が試験的に開始されました。本サービスは7月の予定。
これまで持ち運んで使用する、いわゆるモバイルパソコンでインターネットをする場合、常時接続ならイーモバイルの契約をしたり、たまに接続するならNTTやKDDIのサービスを利用する形態が一般的でしたが、新しい規格の参入で面白くなってきそうです。
イーモバイルが利用しているW-CDMAの拡張版のHSPAと新しいWiMAXとの規格の違いなんかは、無線通信の専門家の萩野さんに聞いてみてくださいね。
さてさて話し変わって今回は、パソコンのデザイン性についてのお話です。
■DELLのAdamoはMacBookAirへのオマージュか?
DELLからスタイリッシュノートパソコンと銘打った超薄型16.4mmのノートパソコンが発売されます。
薄さで言えば、MacBookAirよりも薄型をうたった商品で、かなり購買意欲をそそる製品に仕上がっています。
DELLがこういった商品を展開すること自体、DELLというメーカーを知っている人にとっては驚きですね。
もともと、低価格で数多くパソコンを出荷することで他社に対して有利に商売を進めるという「薄利多売」的な面が大きいDELLという会社ですから、デザインにかなり力を入れた製品展開は意外に見えます。もちろん今でもDELLは薄利多売的な商売を展開し続けていますから、一種の遊び的な側面もあるかもしれませんが、本当のところはどうなのでしょう?
◆DELL Adamo ノートパソコン
http://www.adamobydell.jp/jp
※上記サイトは音が出ますので見るときには注意してください。
■デザイン性に向かうのは必然
大昔のパソコンは無骨で基本的に機能だけを重視して売られていました。性能が高ければデザインなんて気にしない、といった商品展開が主でした。
一部ではデザインが奇抜なものもありましたが、どこか見ている方向が違うな的な商品が多かった印象です。
しかし、WindowsXPが発売された頃からパソコンのデザインは次第に変わってきています。
特に当初からデザイン性を重視していたSONYのパソコンでは、時代時代で様々なデザインの商品が出ていました。
少し前の製品ですが、パソコンが宙に浮いているように見え、キーボードをたたむと液晶の半分が露出し、その部分で時計やカレンダーを表示するなど、SONYのパソコンはデザイン的に優れているものが多い印象です。
現在最も売れている商品であるミニパソコン(MetBook)でも、商品の性能が各社横並びで性能格差が出せないため、様々なデザインの試みがされています。そのなかでも、ミニパソコンとは若干方向性や性能も違いますが、SONYのType
P という小さいノートパソコンが発売され、ヒットを飛ばしています。
世間的にも不特定多数の人に見られる、持ち運びのノートパソコンにスタイリッシュ性を求めるのは必然ともいえます。
◆SONYの額縁のような宙に浮いたデザインのパソコン
http://www.jp.sonystyle.com/Style-a/Product/L15/index.html
◆HP社のヴィヴィアン・タム氏デザインのスペシャルモデル・ミニパソコン
http://h50146.www5.hp.com/products/portables/personal/mini1000_vt/
◆Apple社のMacBookAir
http://www.apple.com/jp/macbookair/
◆ガチャピン&ムックのモバイルノートパソコン
http://lalabitmarket.channel.or.jp/site/feature/gachapinpc.html
◆ハローキティモデルのミニパソコン
http://www1.sotec.co.jp/direct/hellokitty/
■ダサいダサいダサい
私が良く質問をされる事柄に「今どういったパソコンを買えばいいですか?」というのがあります。
もちろん相手が法人・個人で違いますし、予算的な問題、使用目的によって答えは様々に変化します。
しかし、一般家庭でパソコンを買う場合はいつも答えは同じです。
「デザインで気に入ったものがあればそれでいいですよ。メーカーで好きなメーカーがあればそれを選んでいただいてかまいませんよ」と。
インターネット(YouTubeなどの動画閲覧を含む)とメール、ワープロなどをする限りにおいて、現在存在するパソコンの性能で足りないものはありません。
そうなってくると必然的に買った後に満足できる商品を選ぶことになり、長く目の前に鎮座するパソコンであれば、やはりデスクトップでもノートパソコンでもデザイン的に自分の好みのものを選ぶのが最善の選択肢となるでしょう。
■今後のパソコン事情(デザイン編)
今後ともパソコンの性能はますます上がっていきます。
OSに64ビットのWindowsVistaが搭載されたパソコンがちらほら出てきており、ビデオ編集や3DCG制作などのヘビーな作業をするユーザーには大きなメリットはあるでしょう。
しかし、普段普通にパソコンを使う上で必要な性能は数年前の製品で既に満たされています。
あまり知られていませんが、パソコンの性能に大きな影響を及ぼすハードディスクの性能も、SSDの急速な技術革新と低価格化で今後どんどん普及して行きます。そして、今後SSDが広くいきわたるようになれば、もうパソコンの性能向上は必要ないと言っても過言ではありません。
この先パソコン同士の性能差を重視する必要がないとなった場合、皆さんがパソコンを買うといったときに重視するのは「ブランド・デザイン・価格」だけになります。
価格もそれほど差を出さない現状では、ブランドとデザインだけで勝負することになっていくのではないでしょうか。
その場合、Appleのデザイン力や、SONYのデザイン力は他社に対して大きなアドバンテージとなりえます。
NECや富士通といった大手メーカーの製品を見ると未だにどこかで見たようなデザインの商品が多く、場合によっては本気でダサくて「このメーカーはパソコンを売る気があるのか?」と、理解に苦しむ商品もあります。
一時期、あるメーカーの夏モデルラインアップの全ての機種がダサくて、贔屓目のメーカーでしたがさすがにお客様にお勧めできませんでした。
性能が良くてサポートに安心できるパソコンでも、このデザインの商品はお勧めできない、と思ったものでした。
■デザインの好みは千差万別
ある製品が商品として機能する際にはたくさんの要素があります。
使いやすさ、操作性、軽さ、性能、価格、軽さ、堅牢性、などなど。
そしてデザインに関しても千差万別です。
色、形、触り心地、見栄え、独自性、奇抜さ、落ち着き感、ユーザビリティ、などなど。
私は今でも、少し角張ったごつごつしたパソコンが好きな傾向があります。何でもかんでも丸まった形にすればいいだろうという一時期のパソコン周辺機器で流行ったデザインは大嫌いでした。でも逆に何でもかんでも角が丸まってた方が可愛い、と感じる人もたくさんいるでしょう。
初代 iMac なんかは本当に可愛いデザインでしたよね。
AppleのiPod nano のように、色をたくさん展開してお客さんに選ばせといった商品展開は面白い試みですが、パソコンのように10万円近くするモノに対して多色展開はかなりのリスクがあります。前述の宙に浮いたデザインのSONYの旧Type
L シリーズは5色で展開していますが、この商品がまったく売れなかったとしたら色数分だけ商品在庫が発生するため大きなリスクになりえます。
しかし、これからのパソコンはノートパソコン、デスクトップパソコン共にデザインが商品の売れ行きに直結していく時代です。
今回はデザインも頑張りました、と「デザインも」で語っている時代は既に過去のお話です。
日本の精密機器の性能は現在でも世界トップクラスですが、ぼやぼやしていると、かっこいいというだけで売れていく商品を見ながら「なんでうちの製品は性能がピカイチなのに売れないんだろう?」といたことになりかねません。
もっとSONY以外の日本パソコンメーカーは頑張って下さい!
【PCオレンジのパソコンよもやま話 vol.14】
直感的であることは正しいこと
text= Takuya Nagao
ミニパソコンのEeePC で有名なASUSTeK が「Eee Top 1602」というパソコンを発売しました。
このパソコン、今後のパソコンの将来を示唆する面白い機能が付いています。
今回は、これをフィーチャーしてみたいと思います。
■ユーザーインターフェースを考える
WindowsがAppleのMacintoshのユーザーインターフェースを模して作られ、そのことに対して1994年には裁判が行われ、Appleが敗訴したことはこの業界では有名です。
この有名な裁判の判決は簡単に言うと、ユーザーインターフェースはただ似ているだけでは著作権で保護されるものではない、という結論です。
まったくそっくりではないことで、類似しているだけでは著作権的な観点から同じものとして認められないという結論であるため、WindowsはMacintoshに対して、アイコンの位置が真逆に配置され、メニューバーもMacintoshの上に対して、スタートメニューバーが下に配置されています。
ある意味、この裁判でAppleが勝訴していたら今ほどのコンピューターの繁栄はなかったかもしれないともいえるので(Microsoftの強引な商売はパソコンの繁栄に一役買っているとう観点でみれば)、過去のことをいまさらどうこう言うものではありませんが、ユーザーインターフェースの重要性を考えさせられる象徴的な出来事です。
このMicrosoftの処置により、本来のGUIの目的がかなり薄まったと思っています。
元々Apple Computer が(厳密に言えばXeroxのAltoなどからヒントを得て)考え出したグラフィカルなユーザーインターフェース(GUI)をMicrosoftが模したことは、確かに訴訟時に「そっくりではない!ゴミ箱の位置が逆だし、終了の×ボタンもWindowsは右上ですよ!」などと言い訳に使われることはあっても、使う側の使い勝手は違います。
そもそも、なぜMacintoshのメニューバーが上にあるかというとそれが使いやすいからであり、なぜアイコンが右側にあるかというと、ウィンドウをたくさん表示しても邪魔にならない位置だからであり、なぜ終了を行う×ボタンが左上にあるかというと、ウィンドウの目にする際に一番起点になる左隅がマウスでクリックしやすいからです。
そういった使いやすさの試行錯誤、様々な研究からあの画面周りになったのです。
それを「とても使いやすいけど似すぎると裁判起こされたら負けちゃうかもしれないから」といった理由で位置を逆にしたことは、その後の使いやすさに大きく影響したのです。
〔GUI裁判の参考サイト〕
◆コンピュータ関係の創作保護についての最近の米国での話題
http://homepage3.nifty.com/nmat/LOTUS.HTM#S3
■あれから10数年がたちそろそろ変わろうとしているGUI環境
もう一度いいますと、AppleはGUIの使いやすさに関して研究を重ねた結果、画面周りの配置などを決め、マウスを使うことでよりパソコンを身近にしてきました。
シンプルであることが素晴らしい、といったように、Macを使っている人はより仕事に没頭できるような仕組みが随所にあります。ただこれはMacを使ったことがない人には体験できないことではあります。
とはいえ、わたしがPowerMac8500から、Windowsパソコンに移行した後に感じた残念なことがひとつだけあります。それは、Macのマウスには右クリックがないことです。これはWindowsに移行して最初にWindowsが便利に感じたことですが、Macは2009年の現在でも標準で右クリックがありません。
もちろん別売りのマウスを購入すれば、右クリックの機能自体は使えますので問題ないですが。ちなみにMacの場合、Controlキーを押しながらマウスクリックで、右クリックと同じ機能が使えます。
仕事柄お年寄りの家にパソコンの指導に行く機会が多いですが、確かに私のようにパソコンに精通している人間を別にして、普通の人には右クリックを使うのは難しいようです。そういう点で考えると、確かにAppleの判断は正しいのかもしれません。右クリックが必要な人は、別途マウスを買えばいいんですから。
さて、現在変わろうとしているGUI、グラフィカルユーザーインターフェースとはなんでしょうか?
それはもちろん、指を使った、タッチスクリーンです。
かなり昔から、画面を直接触るタッチスクリーンの研究開発は進められていました。
少し前では、大失敗をしたWindows Tablet PC Edition などがあります。
上記のWondows Tablet PC Edition はペンを使ったWindowsでしたが、あまり広まりませんでした。
2002年に発売されたこのOSは失敗しましたが、それなりに原因がありました。その辺りの詳細は省きますが、タッチスクリーン自体は今後のパソコンのパラダイムシフトになりそうな予感がします。
■タッチスクリーンで革新性を呼び起こした iPhone
iPhone を実際に使ったことがない人はたくさんいると思います。
Macintosh(現Mac)を使ったことがない人もたくさんいると思います。
それらを使ったことがない人はとても不幸だといえます。
それはさしずめ「おいしいラーメンを食べたことがないラーメン嫌い」の人ようです。
MacやiPhone のもっとも重要なポイントは「使っていて楽しい」ことにあります。
私はPowerMac8500を使っていたときは「なんてパソコンは楽しいんだろう」と思っていました。なぜかは良く分かりませんでしたが、使用環境がWindowsに移ってからは「処理は確かに早いけど、使っていて不便な事だらけだ」と思っていました。今は慣れましたが(笑)。人は慣れる動物です。
そう、iPhone を使うとその操作性の快適さに誰もが「楽しい」と思うことでしょう。
そういった体験を呼び起こしているのはもちろん綿密に計算された結果です。こうすれば使いやすいはずだ、といった研究の結果の成果が、あのiPhone の操作性になっているのです。
※コピーペーストが出来ないことや、一部の操作性が統一されていないことは、ちょっと目をつぶってくださいね。
先ほど冒頭で述べた「Eee Top 1602」というパソコンですが、「Easy Mode」というのがあり、この動きがiPhone を髣髴(ほうふつ)とさせる動きをしています。これを見ていると
「おお?これはキタかな?!」と感じました。
◆タッチパネル付液晶一体型ネットトップ「ASUSTeK Eee Top」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/20090409_110610.html
■直感的であることは正しい
「直感的であることは正しい」。ことパソコンの操作に関しては。
iPhone でページをめくるときわずかに画面が行き過ぎます。そして、すぐに戻ります。
画面上のボタンを押すとそのボタンが少し大きく薄くなったりして自己主張します。
Macでは、フォルダにすぐに色をつけられます。仕事の内容によって色分けをしたり出来ます。
新しいMacに付属しているiLife内の iMovie は直感的に全ての編集操作が出来るそうです。
人は、一生分の経験だけでは学びきれないことがたくさんあります。
そのために本を読んだり人に教わったり歴史に学んだりします。
パソコンの操作でもそうです。忙しい人生の中、パソコンにだけかかずらっていられないですよね?
こうかな?こうかな?と操作自体に悩んでいては本末転倒です。
パソコンはツールであって、パソコン自体が「学ばなくてはいけないもの」であってはならないのです。
とはいえ、現在のWindows環境だけでは直感的に使うといったことは望めそうもありません。
その補助的なツールとして、タッチスクリーンでの操作補助というのは今後円熟していくジャンルではないでしょうか?
もちろんその土台は大事です。
つまり、世界的に iPhone による指での操作がいかに使いやすいかを再発見している現在、その操作性その使いやすさがそのままパソコンの画面でも出来れば、かなりの需要はありそうです。
先ほどの「Eee Top 1602」はパソコンの性能が低いため操作に引っかかりはあるようですが、動画を見ていると少しわくわくしてきます。
もっと直感的に!そう、もっと直感的に操作させて欲しいし、そうあるべきでしょう。
Appleが今後タッチスクリーンを搭載したパソコンを出すという噂もありますので、それも楽しみです。
しかし近々で言えば、Windowsの画面操作をアプリケーションを使ってタッチスクリーン操作で行えるようにするのは使い勝手に関してパラダイムシフトになりえるような気がします。
もちろん、Windows Tablet PC Edition のように全ての操作を指で行おうとしても意味がありません。
指で操作するのはあくまで補助的なものであって、パソコンの使いにくいところを助けるものであるというのが大事だと思います。実際画面が汚れたらいちいち拭くのも大変でしょうから、その辺も解決して欲しいですね。
ノートパソコンもデスクトップパソコンも画面がタッチスクリーン可能なディスプレイになったしても、現在ではたいしたコストもかからないでしょう。(タッチスクリーン対応にするにはセンサーが必要です。)
この分野というか、このジャンルは今後ますます目が離せませんね。
願わくば、過去のGUI訴訟のときのように「訴えられないように、ちょっと使い勝手を変えておこう」といったくだらない考えで、使いやすさが犠牲にならないことを願ってやみません。
文・長尾卓哉(ながお・たくや)
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